若者の雇用機会の創出に向けた多国籍企業との関わり(コートジボワール)

コートジボワールの経済は長期間にわたる危機的状況から緩やかに回復しており、若い世代のために明るい未来を構築することが非常に重要になっています。コートジボワールで活動する多国籍企業が増加しており、まだほぼ手付かずではあるものの、現地の雇用創出の供給源として期待されています。現在までのところ、雇用できる現地熟練労働者が少ないことから、仕事には主に外国人が就いています。ILOは、こうした国内の優先課題に多国籍企業が関与することにより状況改善を図ることを目指し、政府と使用者団体及び労働者団体を支援しています。

パートナーシップ・アプローチの促進

多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)の指針内容に基づいて、ILOは2010年から、コートジボワールが直面している重要課題の一つである、若者の失業問題への取り組みのために官民パートナーシップ・アプローチを促進して、コートジボワールに技術援助を提供しています。ILOの介入と支援には、データ収集、対話の促進、共同行動計画の策定及び計画実施への支援が含まれています。

堅固な知識基盤の構築

2010年にILOは、多国籍企業が、各企業とそのサプライチェーンにおいて、企業活動を通じて現地の若者のためにより多くのより良い雇用を創出できる方法を特定するために、約30社の多国籍企業を対象に調査を行いました。この調査は、日本政府が資金提供した国連工業開発機関(UNIDO)とILOの若年雇用プロジェクトの枠組みの中で実施されました。この調査は、多国籍企業宣言の原則に沿った多国籍企業による国の経済的・社会的発展への積極的な貢献を促進すること、また同時に長期的な競争力と持続可能性の強化により多国籍企業が恩恵を受けられるようにすることを目的としています。「Promouvoir la création d'emplois pour les jeunes dans les entreprises multinationales et leurs chaînes d'approvisionnement(多国籍企業やサプライチェーンの若者の雇用創出を促進)」と題されたこの調査では、コートジボワールへの海外外直接投資(FDI)の主要な誘致先である4つの経済部門、すなわち農業及び農業関連産業、銀行業、鉱業、通信業における雇用創出の見通しに焦点が当てられました。


使用者による主導: 若年雇用の促進及び責任ある投資に関するタスクフォース

この調査結果と勧告の報告を受けた多国籍企業の代表者たちによって、コートジボワール企業連合会(CGE-CI)の指揮の下、多数の利害関係者が参加して、若年雇用の促進及び責任ある投資に関するタスクフォースが設置されました。多国籍企業、訓練調査機関、大学と若年雇用担当政府機関の代表者で構成されたこのタスクフォースによって、調査の勧告の具体的なフォローアップが確実になりました。

具体的な行動につながる、すべての主体によるハイレベルなコミットメント

その後のハイレベル政策対話とテクニカルワークショップには、多国籍企業50社以上の代表者(いずれもタスクフォースのメンバー)と政府(内務省、雇用・社会保障省、教育技術・職業訓練省、高等教育・科学研究省)からの代表者が参加しました。政策対話は、公共と民間の両部門の主要関係者にとって、若年雇用に対する取り組みのコミットメントをいかにして具体的な共同行動へと移していくかを協議する機会となりました。

参加者によって、若年雇用機会創出に寄与する政府と企業の具体的な役割を明記したポリシーステートメントが採択されました。行動計画は、調査対象となった4つの経済部門(農業、銀行業、鉱業、通信業)の部門ごとに策定されました。各行動計画の優先事項区分は、1)多国籍企業と中小企業間の連携の強化、2)雇用に対する外国及び国内投資の影響、3)シエラレオネとリベリアでも実施された同様の調査に基づく、多国籍企業の若年雇用イニシアチブの準地域レベルへの規模拡大となっています。

コミットメントの実施

若年雇用の促進及び責任ある投資に関するタスクフォースのメンバー企業は、多くのCGE-CIのイニシアチブに参加しました。例えば、採用支援イニシアチブにおいて、タスクフォースメンバー企業の人事マネージャーのネットワークは、男女の若者数百人を対象にしたインターンシップの機会提供に関して、雇用調査・促進局(AGEPE)と協力を開始しました。インターンシップ生の多くが、その後インターンシップ先の企業に雇用されました。多国籍企業、訓練機関、公的雇用サービス機関の間の対話によって、多くの多国籍企業とパートナーシップ協定が締結されました。部門ごとに、特定の能力開発が必要な分野が割り出されました。例えば、農工業部門は、3年間で1,000人を対象にした訓練に取り組みました。その他のイニシアチブとして、若年雇用と若者の起業促進に向けた財政的インセンティブの導入などもありました。

承認された行動計画で講じられた措置

1. ILOは、サプライチェーンの力を強化するための多国籍企業と現地の中小企業間の既存及び潜在的な連携を評価するため、国内研究機関であるコートジボワール社会経済研究センター(CIRES)と共同で、2本目の調査「Le renforcement des liens entre les PME locales et les entreprises multinationales dans le cadre de leurs chaînes d'approvisionnement(サプライチェーンの一環として地域の中小企業と多国籍企業との関係を強化)」を実施しました。 2014年7月、政府、使用者と労働者の代表者が、このILOによる調査の勧告内容について協議するワークショップに参加しました。この中で、1)現地企業との契約推進、2)多国籍企業と中小企業との対話の場の構築、3)中小企業の人材管理能力の向上、4)雇用に対するFDIの影響評価、5)多国籍企業から中小企業への技術移転を可能にする環境の整備、6)中小企業開発の促進という6つの戦略領域を対象とした行動計画が採択されました。

2. 国内の投資促進機関であるコートジボワール投資促進センター(CEPICI)と CGE-CIの要請に応じて、ILOは、行動計画に基づき、雇用に対する外国及び国内投資の影響についてより良く評価するために新設された国内委員会への技術援助を行っています。さらに、ILOはコートジボワールの政府、企業、労働者と新たな投資家間の対話促進への取り組みで積極的な役割を果たすよう求められてきました。

3. ILOは、コートジボワール、シオラレオネ及びリベリアにおける優先事項である若年雇用に関して多国籍企業と協力した経験を、西アフリカ使用者団体連盟(FOPAO)の年次総会で発表しました。多国籍企業と連携した若年雇用促進に関する地域調査、国レベルの試験的イニシアチブ、鉱業部門の調査などを含む準地域の行動計画案が作成されました。

強固なコミットメントと国内における実施

近時、コートジボワールには、フランス政府拠出のプロジェクト「ビジネスとディーセント・ワーク」の一環で、技術協力がなされています。このプロジェクトは、ディーセント・ワークの優先目標の実現に向けて国内及び多国籍企業の力を発揮させるにあたり必要となる政労使の能力構築を目的としています。また、持続可能な開発と包摂的成長への投資家の貢献を最大化するための投資化との関係性構築に向けた国内の能力開発にも目を向けています。2017年の多国籍企業宣言の採択に伴い、同宣言を促進するため、コートジボワールは3つの各国担当窓口(ナショナル・フォーカル・ポイント)(各国担当窓口のページにリンク)を指定しました。2018年の末頃には、多国籍企業宣言の促進に向けたフォーラムが開催予定であり、政労使三者の各国担当窓口が、宣言促進に向けたコートジボワールの国別行動計画を立ち上げる予定です。
 
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